死亡事故の慰謝料はいくら?その目安と請求のポイント
交通事故によりご家族が亡くなってしまったとき、遺族はどれくらいの慰謝料が請求できるのでしょうか。ご本人が亡くなる前までの治療費や葬儀代は請求できるのでしょうか?
ここでは、死亡交通事故の慰謝料について掘り下げて解説します。
交通事故で死亡したとき、請求できる賠償金
まずは、請求できる慰謝料など基本的な項目を挙げてみます。
・被害者本人の慰謝料
・残された遺族の慰謝料
・入通院慰謝料
・亡くなるまでにかかった治療費
・葬式代
中でも金額が大きく、請求方法によって金額が変わるのは慰謝料です。
慰謝料は誰が請求するか?
死亡事故による慰謝料は、被害者本人は死亡しているわけですから、自ら請求することはできません。このようなときは、遺族(法廷相続人)が行うように民法で定められています(民法第711条)。法定相続人とは、原則として配偶者や子ども、兄弟姉妹などです。
また、内縁関係があった場合、法定相続人でなくても賠償請求ができます。この場合は、扶養利益の喪失と呼ばれるもので、扶養者が亡くなったことによる将来的の援助という意味あいのものです。
いつ頃請求すればよいか?
慰謝料の請求は、一般的には四十九日後に行います。
ご注意いただきたいのは、加害者が刑事事件の裁判を受けているケースです。早期に示談を成立させてしまうと、「被害者の感情は癒された」とみなされ、量刑の軽減を主張するケースもあります。慰謝料の請求時期は慎重に決めてください。
また、加害者やその代理として保険会社の担当者が葬式に参列するケースがあります。場合によっては、このときに受け取る香典すら拒否した方がよいこともあります。これらは個別のケースで違いますので、できるだけ早く弁護士に相談することをおすすめします。
慰謝料計算の3つの基準と金額の目安
慰謝料を請求する際の金額基準には次の3つがあります。
・自賠責保険基準
・任意保険基準
・弁護士(裁判所)基準
金額面から言えば、自賠責保険基準は最も安く、弁護士(裁判所)基準は最も高くなります。それぞれの基準での計算方法を順に解説します。
自賠責保険基準は最も安い
自賠責保険から出される保険料は、「国からの最低限の補償」という位置づけがあります。最低限の補償ですから、金額は低くなります。
慰謝料を算出する際には、被害者本人の慰謝料に加え、遺族の慰謝料を足して金額を決定します。
まず、被害者本人の慰謝料について、死亡事故における自賠責基準は、一律400万円です。年齢や職業は関係ありません。
次に、遺族の慰謝料ですが、これは請求者の人数によって変わります。慰謝料を請求できるのは、被害者の父母や配偶者、子ども(養子や胎児も含む)です。また、相続の優先順位により、父母や兄弟姉妹が相続できることもあります。
慰謝料額は以下となります。
1人の場合 | 550万円 |
2人の場合 | 650万円 |
3人以上の場合 | 750万円 |
このほか、被扶養者がいる場合、200万円が追加されます。被扶養者とは、被害者の収入で生計を立てている家族のことです(一定のルールあり)。
任意保険基準とは?
次は、任意保険基準です。
任意保険基準による慰謝料は、各保険会社や保険商品などによって違う部分もあり、しかも公開されていません。位置づけとしては、自賠責保険でカバーできない部分の補償であり、加入状況によっても慰謝料金額が変わってきます。
慰謝料の金額の相場は、推定値ですが以下になります。なお、任意保険基準は遺族分を分けて計算しません。
一家の生計を支えている場合 | およそ1,500万円〜2,000万円 |
配偶者の場合 | およそ1,300万円〜1,600万円 |
子どもや高齢者など | およそ1,100万円〜1,500万円 |
弁護士(裁判所)基準は最も高い
最後は弁護士(裁判所)基準です。こちらは、弁護士に示談交渉を代行してもらった際に請求できる金額の基準となります。同時に、裁判の判例が目安でもあります。
一家の生計を支えている場合 | 2,800万円 |
配偶者の場合 | 2,500万円 |
子どもや高齢者など | 2,000~2,500万円 |
上記はあくまでも目安であり、これ以外にも遺族の慰謝料を請求できることがあります。
慰謝料が上乗せされるケース
慰謝料が増額となる代表的なケースは以下です。
・被害者が入院後、死亡した(入通院慰謝料の請求が可能)
・飲酒や居眠り運転、ひき逃げなど、悪質な交通事故
・加害者が謝罪しないなど、誠意が感じられない
交通事故の慰謝料請求は個別に加算できる要素が違います。妥当な請求を勝ち取るためには、交通事故の強い弁護士のサポートを受けることが重要です。
葬式代はどれくらい請求できるか?
葬儀費といっても費用はいろいろ。近年では家族葬などといわれる身内だけで済ませることも多くなっていますが、まだまだ百数十万円かけて葬儀を行うことが多いようです。
この葬儀費について、自賠責保険では60万円を限度としています。かなり少ないと感じる方も多いかも知れません。領収書などをきちんと保管し、妥当な実費だと判断されれば100万円まで認められます。
ここで言う費用は、通夜や祭壇、火葬などにかかる費用です。香典をもらっても損害賠償金から差し引かれることはありません。しかし、香典返しや接待費用、墓地の費用などは費用として認められませんので注意してください。
また、弁護士のサポートを受ければ150万円まで費用として認められます。弁護士には早めに相談してください。
逸失利益はどうなるか?
逸失利益とは、亡くなった被害者が将来得られるはずだった収入のことです。
逸失利益を計算するには、「ライプニッツ係数」が使われます。これは、「就労可能年数に対応する中間利息控除係数」と呼ばれるもので、長期にかかる賠償金を一時金に換算する専門的な係数です。事故にあったときの年齢によって決められているのが特徴です。
数値は国土交通省のサイトで確認できます。
逸失利益の計算方法は以下です。
基礎収入額×(1-生活費控除率)×ライプニッツ係数
「基礎収入額」は、事故にあう前の年収を指します。ただし、収入がなかった学生や無職の方でも逸失利益の請求は可能です。
「生活費控除率」とは、被害者本人の生活費に相当する額のこと。生活費控除率が少なければ、逸失利益の金額は多くなります。
納得できない示談書にサインをしないでください
死亡時の賠償金請求は悲しみの中で進めなければなりません。しかも、知らないことばかりで、任意保険会社の言われるままに示談交渉をすすめてしまう方も多くいらっしゃいます。ですが、任意保険会社は加害者側の立場であり、利益を追求する企業です。
示談書にサインをしてしまうと、それで示談は成立してしまいます。交通事故の悲しみを癒しつつ、後になって後悔することがないよう、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。