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口の後遺障害とは?
症状と後遺障害等級認定の慰謝料相場について

口は非常に重要な器官です。飲食物を食べて味を感じ、飲み込むだけでなく、話しをする役割も果たします。事故により口に障害を受けると、さまざまな面に不自由を感じるだけでなく、味覚を喪失したり、コミュニケーションが円滑に進まなかったりすることで、生きる楽しみがなくなることもあります。

ここでは、口に関する後遺障害について解説していきます。

口の後遺障害と後遺障害慰謝料の相場

口は多くの機能をもっています。口の後遺障害として考えられるのは咀嚼及び言語の機能障害、嚥下障害、歯の障害、これに加えて味覚の障害もあるでしょう。順番に解説していきます。

咀嚼及び言語の機能障害

症状等級自賠責基準弁護士基準
咀嚼及び言語の機能を廃したもの1級2号1150万円2800万円
咀嚼又は言語の機能を廃したもの3級2号998万円2370万円
咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの4級2号737万円1670万円
咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの6級2号512万円1180万円
咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの9級6号249万円690万円
咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの10級3号190万円550万円

咀嚼(そしゃく)とは、食べ物を咬み砕くことを指します。口は食物の消化吸収の第一歩であり、それには咀嚼が欠かせません。よく噛み、唾液と混ざることで胃や腸で消化・吸収しやすくするわけです。また、唾液は口の中の自浄作用を助け、精神的な充実感や満足感も与えてくれます。

この咀嚼の障害が起こる原因として考えられるのは、咀嚼のための筋肉や歯牙、顎関節の異常によるものです。後遺障害認定においては、他覚的な所見が得られやすいのが特徴で、事故直後や治療中、症状固定時のMRIやCT、レントゲン等も画像を活用します。また、テストもいくつか存在します。

後遺障害等級認定では、どれくらいのものが咀嚼できるかを基準にします。

「咀嚼機能を廃した」とは、流動食以外は摂取できないことを指します。
「咀嚼機能に著しい障害」とは、おかゆなどやわらかい食品以外は摂取できない状態を指します。
「咀嚼機能に障害を残す」とは、咀嚼できる食品に制限があり、たとえばピーナッツなどの固い食品は難しい状態のときを指します。

語音の種類と認定基準

言語には母音と子音があります。このうち、子音の発声は次の4種類に分類できます。

1.口唇音(ま行音、ぱ行音、ふなど)
2.歯舌音(な行音、た行音、ら行音、しなど)
3.口蓋音(か行音、や行音、ひ、にゅなど)
4.喉頭音(は行音)

後遺症等級認定では、この4つのうちいくつができなくなっているのかを基準にします。

3種以上の発音不能がともなう状態を「言語の機能を廃したもの」
2種の発音不能のもの、または言語のみで意思を疎通することができない場合を「言語の機能に著しい障害を残すもの」
1種の発音不能の状態を「言語の機能に障害を残すもの」としています。

嚥下障害

嚥下については、機能障害の等級が準用されることになっています。

嚥下(えんげ)とは、口の中で食品を咀しゃくした後、喉の奥へ送り込んで飲みこむ動作のこと。つまり嚥下障害になると、飲食物の飲み込みが困難になると言うことです。

普段あまり意識しないで行っていますが、実は複雑な運動で、神経や筋肉に障害が生じると嚥下障害が起こります。

嚥下障害になると、食物摂取が十分にできなくなるため栄養低下が起こるほか、誤嚥性肺炎(食物が器官に入ることで起こる肺炎)が発生しやすくなります。正常な状態であれば、気管に異物が入ればむせることで異物を取り出しますが、嚥下障害の場合は、むせることができなかったり、力が弱いために異物が取り出せなかったりして誤嚥性肺炎になるわけです。

歯牙の障害

症状等級自賠責基準弁護士基準
14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの10級4号190万円550万円
10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの11級4号136万円420万円
7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの12級3号94万円290万円
5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの13級5号60万円180万円
3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの14級2号40万円110万円

歯科補綴(しかほてつ)とは、歯を完全に喪失、または見えている部分の4分の3以上を欠損することを指します。事故で失った場合はもちろん、機能や見た目を回復させるために、治療する際に上記の状態になった場合も含まるのがポイントです。

治療方法は、インプラントや入れ歯、インレー(詰め物)、クラウン(被せ物)などがあります。

歯牙の障害では、治療のために必要だった歯も加えられるのですから、たとえば、ブリッジのために前後の歯を支台歯として活用し、このとき4分の3以上を削ることになれば認定の対象となるわけです。

併合や相当が多い口の後遺障害

口はさまざまな機能をもつため、複数の障害が同時に起こる可能性が高くなります。たとえば、咀嚼機能障害と言語障害があったり、その原因が歯牙障害であったりします。この場合、両方を併合した等級が認定されます。

また、以下の障害については基準がありませんが、他の障害と比較して相当扱いとなります。

症状等級自賠責基準弁護士基準
声帯が麻痺して著しいかすれ声になった12級相当94万円290万円
味覚を脱失したもの12級相当94万円290万円
味覚を減退したもの14級相当40万円110万円

後遺障害等級認定のためのポイント

妥当な後遺障害等級の認定を受けるには、他覚的検査の結果を提出し、医学的な裏付けとします。味覚障害であれば、電気味覚検査やろ紙ディスク法などがあります。

また、過不足のない後遺障害診断書を完成させることも重要で、作成の前に医師に症状を伝えることや交通事故の強い弁護士と連携する必要があります。