高次脳機能障害とは?
症状や治療法と後遺障害等級認定の慰謝料相場について
高次脳機能障害とは、事故で受けた脳の損傷により記憶障害や注意障害、認知障害などを引き起こすものです。中には、外見からは分からないこともある一方、生涯を通じて大きな負担を強いることになります。
ここでは、高次脳機能障害の症状と後遺障害認定について解説します。
高次脳機能障害とは?
高次脳機能障害は、脳が損傷を受けた結果、知的活動に障害が生じることを言います。脳は、言語、思考、記憶、行為、学習、注意など複雑な部分を司っているため、ここに損傷を受けることで、さまざまなことに障害が出てしまうわけです。
具体的には、記憶や思考、学習などの認知面に症状が出る以外に、感情を含む精神面に症状がでるケースもあります。まずは、主な症状をあげます。
1.記憶障害、認知障害
新しいことを覚えられない
物をどこに置いたかわからない
約束を忘れる
何度も同じ質問を繰り返す
2.注意障害、集中力障害
気が散りやすく、作業を長く続けられない
単純作業でもミスをする
2つのことを同時に行えない
疲れやすい
3.遂行機能障害
行動を計画的に実行できない
物事の優先順位がわからない
4.社会的行動障害
他人に依存する
子供っぽくなる
特定のことや物に固執する
行動を抑制できず、社会生活上のマナーやルールを守れない
我慢ができず、浪費する
感情をコントロールできず、すぐに怒ったり、暴れたりする
うつ状態が続き、何もやる気がしない
高次脳機能障害は日常生活にも大きな支障をきたしますが、一見しただけでは症状を認識しにくく、また本人も自覚できないことも多いため、見逃されがちとなります。周りの人が異変を感じたら医師に相談するようにしてください。
高次脳機能障害の原因
高次脳機能障害の原因はさまざまです。主な原因疾患を挙げます。
1.脳卒中などの脳血管障害(脳出血やくも膜下出血、脳梗塞など)
2.脳外傷(外傷性脳損傷)
3.脳炎・脳症
後遺障害等級認定の慰謝料相場
症状 | 等級 | 自賠責基準 | 裁判所基準 |
---|---|---|---|
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの | 1級1号 | 1,150万円 | 2800万円 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの | 2級1号 | 998万円 | 2370万円 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの | 3級3号 | 861万円 | 1990万円 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 5級2号 | 618万円 | 1400万円 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 7級4号 | 419万円 | 1000万円 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | 9級10号 | 249万円 | 690万円 |
高次脳機能障害については、症状の重さに応じた後遺障害等級がそれぞれ定められており、どの等級を認定されるかによって慰謝料額も大きく変わります。立証しにくい部分もありますので、納得できる等級を受けるには医師に加え、交通事故に詳しい弁護士と連携することが重要となります。
後遺障害認定のためのポイント
高次脳機能障害は、仕事や日常生活に支障を生じさせるものの、外見では異常がないように見えます。特に人格変化などは医師でも分かりにくいケースも多く、「元からの性格ではないか」と言われることもあるようです。必要な検査やテストを受けることはもちろん、「後遺障害診断書」作成の前に医師に、以前と変わってしまった部分を明確に伝えることが重要となります。
以下は、高次脳機能障害として等級認定を受けやすいポイントです。
1.脳の検査所見がある
MRI、CT、脳波検査などで、脳の異常が確認できること。
2.事故直後の意識障害があった
事故直後、6時間以上に渡る意識障害があった場合は、認定が受けやすくなります。
3.具体的な変化があり、不都合が生じている
記憶障害や社会的行動障害により、日常生活や社会生活に不都合が生じていることが重要です。医師は変化前の状態を把握していないため、気づいたことはメモしておき、医師に伝えるようにします。