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下肢の機能障害とは?
症状と後遺障害等級認定の慰謝料相場について

下肢とは股関節から指先まで、つまり足全体を指します。足は移動するときには体を支える重要なパーツであり、ここが何らかの障害を受けるとうまく移動ができなかったり、負担がかかったりして、生活に多大な影響を与えます。
ここでは下肢の障害について、障害ごとにわけ、後遺症慰謝料の相場とともに説明します。

なお、足首から先の障害については、こちらにあります。

下肢の後遺障害の種類と慰謝料の相場

下肢の後遺障害には、4つの分類があります。

・欠損障害

下肢の一定部分を失ったもの

・機能障害

関節(股関節、膝関節、足関節)の動きが悪くなったもの

・変形障害

下肢の骨折した部分が固まらないか、曲がったまま固まってしまったもの

・短縮障害

下肢が短くなったもの

説明は上記の順番で行います。

下肢の欠損障害とは?

下肢の欠損障害とは、足をいずれかの箇所で離断してしまったものを指します。事故によって離断した場合はもちろん、治療の段階でやむなく切断することになった場合も含まれます。片足か両足かに加え、切断箇所によって後遺障害認定等級が変わります。

症状等級自賠責基準弁護士基準
両下肢をひざ関節以上で失ったもの1級5号1,150万円2800万円
両下肢を足関節以上で失ったもの2級4号998万円2370万円
1下肢をひざ関節以上で失ったもの4級5号737万円1670万円
両足をリスフラン関節以上で失ったもの4級7号737万円1670万円
1下肢を足関節以上で失ったもの5級5号618万円1400万円
1足をリスフラン関節以上で失ったもの7級8号419万円1,000万円

「下肢をひざ関節以上で失った」とは、以下のいずれかを指します。

  • 股関節において、寛骨と大腿骨を離断した(足の付け根以下、すべてを失った)
  • 股関節とひざ関節との間で下肢を切断した
  • ひざ関節において、大腿骨と脛骨および腓骨とを離断した(ひざから下を失った)

「下肢を足関節以上で失った」とは、以下のいずれかを指します。

  • ひざ関節と足首の関節との間で足を切断した
  • 足首から先を失った

「足をリスフラン関節以上で失った」とは、以下のいずれかを指します。

  • 足関節とリスフラン関節までの間で切断した
  • リスフラン関節で離断した

ここで言うリスフラン関節とは、踵とつま先の中間、およそ土踏まずの中央あたりの関節のことです。

両足共にリスフラン関節以上で失った場合は、4級が認定されます。

下肢の機能障害とは?

下肢の機能障害とは、3大関節(股関節、ひざ関節、足関節)の動きに関する障害をいいます。

症状等級自賠責基準弁護士基準
両下肢の用を全廃したもの1級6号1,150万円2800万円
1下肢の用を全廃したもの5級7号618万円1400万円
1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの6級7号512万円1180万円
1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの8級7号331万円830万円
1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの10級11号190万円550万円
1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの12級7号94万円290万円

「下肢の用を全廃した」とは、3大関節すべてが強直したものを指します。

「関節の用を廃した」とは、以下のいずれかを指します。

  • 関節が強直した
  • 関節の完全弛緩性麻痺か、これに近い状態
  • 人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節で、可動域が健側の2分の1以下

「関節の機能に著しい障害を残す」とは、以下のいずれかを指します。

  • 関節の可動域が、健側の可動域角度の2分の1以下
  • 人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節で、可動域が健側の2分の1以下でないもの

「関節の機能に障害を残す」とは、関節の可動域が健側の可動域角度の4分の3以下の場合を指します。

下肢の変形障害とは?

下肢の変形障害とは、下肢の骨折した部分が固まらないか、曲がったまま固まってしまったものです。基準は以下のとおりです。

症状等級自賠責基準弁護士基準
1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの7級10号419万円1,000万円
1下肢に偽関節を残すもの8級9号331万円830万円
長管骨に変形を残すもの12級8号94万円290万円

「偽関節」とは、骨折したところが固まらなかったために、関節ではないところが曲がってしまう状態をいいます。

「偽関節を残し、著しい運動障害を残す」とは、次のいずれかであり、かつ、常に硬性補装具が必要なものを指します。

  • 大腿骨に癒合不全を残す
  • 脛骨および腓骨の両方の骨幹部等に癒合不全を残す
  • 脛骨の骨幹部等に癒合不全を残す

ここで言う硬性補装具とは、プラスチックや金属製などを使いオーダーメイドで作ったもので、サポーターのような布製やゴム製の伸縮性のあるものは含まれません。

「偽関節を残す」とは、以下のいずれかに該当するものを指します。

  • 大腿骨の骨幹部等に癒合不全を残すが、常に硬性補装具を必要としない
  • 脛骨および腓骨の両方の骨幹部等に癒合不全を残すが、常に硬性補装具を必要としない
  • 腓骨の骨幹部等に癒合不全を残すが、常に硬性補装具を必要としない

「長管骨に変形を残す」とは、以下のいずれかに該当するものを指します。

  • 外部から見てわかるほど大腿骨に変形が残るか、外部から見てわかるほど脛骨に変形が残る
  • 大腿骨または脛骨の骨端部に癒合不全を残すか、脛骨の骨端部等に癒合不全を残す
  • 大腿骨または脛骨の骨端部のほとんどを欠損した
  • 大腿骨または脛骨の直径が3分の2以下に減少
  • 上腕骨、橈骨または尺骨の骨端部のほとんどを欠損した
  • 大腿骨が外旋45度以上、または内旋30度以上変形癒合し、外旋変形癒合であれば股関節の内旋が0度を超えて可動できないか、内旋変形癒合は股関節の外旋が15度を超えて可動できない。または、エックス線写真等により、大腿骨骨幹部の骨折部に回旋変形癒合が明らかに認められる

ここで言う長管骨とは、大腿(股関節からひざまで)にある大腿骨と下腿(ひざから足首まで)にある脛骨や腓骨を指します。

靭帯の断裂などにより関節が動揺した状態の場合、硬性補装具の装着の程度により等級が決まり、8級、10級、12級(相当)となります。

下肢の短縮障害とは?

下肢の変形障害のひとつに、足が短くなってしまう短縮障害があります。短縮具合によって等級はわかれます。

症状等級自賠責基準弁護士基準
1下肢を5センチメートル以上短縮したもの8級5号331万円830万円
1下肢を3センチメートル以上短縮したもの10級8号190万円550万円
1下肢を1センチメートル以上短縮したもの13級8号57万円180万円

下肢の短縮障害は、上前腸骨棘と下腿内果下端間の長さを、健側の下肢と比較することで判断します。

後遺障害認定のためのポイント

いずれの場合も、他覚的所見を示さなければなりません。レントゲンやMRI画像で障害が残った状況を明らかにし、治療内容や治療頻度、各種テストの結果、症状の連続性などを書面で過不足なく伝えることが重要となります。

テストの中には痛みを伴うものもあり、被害者の負担になる場合もありますが、医師とコミュニケーションをとりながら計画的に進めましょう。また、交通事故に強い弁護士に早めに相談することも大切です。

下肢の障害の解決事例