鼻の後遺障害とは?
症状や後遺障害等級認定の慰謝料相場について
鼻は顔の中心にあり見た目の存在感が大きく、機能としても呼吸と臭覚という大きな役割をもっています。ただし、鼻に関する後遺障害は1つしか基準がなく、鼻が欠損した上に機能もなくなった場合となっています。では、規定に満たない障害の場合はどうなるのか?
ここでは、鼻に関する後遺障害認定について解説します。
鼻の後遺障害とは?
鼻の構造は、他の人から見える「外鼻」と内部の「鼻腔」に分けられます。外鼻は、上半分には頭の骨とつながっている骨があり、下半分は軟骨でできています。鼻腔はのどにつながる2本の管状の空洞で、上部には粘膜層があり、ここで臭覚を感じます。
交通事故により鼻が負う障害としては、外鼻を欠損するものと、鼻呼吸または臭覚といった機能を失うことが考えられます。
後遺害等級認定の慰謝料相場
鼻の後遺障害の基準は、1つのみです。
症状 | 等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|---|
鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの | 第9級5号 | 245万円 | 670万円 |
上記に満たず、鼻を一部欠損しただけの場合は、「外貌醜状」として認定されます。
9級5号として認定されるには、2つ要件のどちらにも該当しなければなりません。つまり、①鼻を欠損し、かつ、②機能に著しい障害を残した場合のみ該当するということです。
ここで言う「鼻を欠損」とは外鼻の軟骨部の全部、あるいは大部分を欠損したもの、「機能に著しい障害を残す」とは鼻呼吸困難、または嗅覚脱失を指します。
嗅覚脱失の検査方法
嗅覚脱失の検査には、T&Tオルファクトメーターを使います。これは、日本で唯一、基準嗅覚検査として活用されているものです。
まず、検知域値を調べます。T&Tオルファクトメーターでは5種のにおいを8段階の濃度で設定してあります。これを弱いにおいから徐々に強いものに変えてゆき、どこからにおいを感じるかを調べます。
次が認知域値です。さらに強いにおいをかいでもらい、何のにおいか、またどのような感じのにおいを答えてもらいます。この2つのデータをもとに認知域値の平均嗅力損失値を算出し判断します。結果は以下です。
5.6以上 → 嗅覚脱失
5.5以下2.6以上 → 嗅覚減退
鼻の欠損はなく、機能障害だけがある場合
鼻の欠損が少ないか欠損せずに、鼻の機能障害のみが残ったケースは基準に定められていません。そのため機能障害の程度により、12級12号、または14級9号が準用されます。
症状 | 等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|---|
嗅覚脱失又は呼吸困難が損するもの | 12級12号 | 93万円 | 290万円 |
嗅覚の減退のみが存在するもの | 14級9号 | 32万円 | 110万円 |
後遺障害認定のためのポイント
鼻の欠損は、CTなどの画像で証明する必要があります。また、症状固定前に形成手術等を行い、鼻の再建手術をしている場合は、欠損と認められなくなります。このため、症状固定のタイミングは十分に考慮します。 また、場合によっては、顔面の醜状痕とした方が有利なケースがあります。専門家に相談の上、どちらにするかを決定してから再建手術などを行ってください。