後遺障害7級に認定される症状と
後遺障害慰謝料、逸失利益相場
監修:弁護士 伊藤一星(弁護士法人宇都宮東法律事務所)
所属:栃木県弁護士会(登録番号:49525)
2020.8.27(最終更新日:2020.12.21)
後遺障害7級は、聴力や視力に障害が残るなどして、労働はできても一定の制限がある他、人目につく傷跡や生殖機能に関するものも含まれます。
ここでは後遺障害7級に認定される症状を紹介し、それによって請求できる後遺障害慰謝料と逸失利益の相場を解説します。
後遺障害7級とは?
後遺障害7級は、1号から13号まであります。
詳しく見ていきましょう。
7級1号 一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの
片目が失明し、もう片方の視力が0.6以下になった場合です。
失明とは、眼球を失ったケースや視神経に障害が残ったもので、その理由は問われません。具体的には、眼球の摘出から、明暗を判断できない、または明暗のみがようやく判断できる程度のものを言い、視力が0.01未満になってしまった場合がこれにあたります。
視力とは眼鏡やコンタクト着用時の矯正視力です。
7級2号 両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
両耳共に聴力が落ち、40cm以上離れると普通の話し声が理解できないもの。具体的には、平均純音聴力レベルが70dB以上の場合、または平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のものを指します。
7級3号 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの
片耳は全く聞こえず、もう片一方の耳では、1m以上離れると普通の話し声が理解できないもの。具体的には、片耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが60dB以上のものを指します。
7級4号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7級5号 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
神経系統には脳のダメージを原因とするものも含みます。胸腹部臓器とは、呼吸器、循環器、小腸や大腸などの腹部臓器のほか、泌尿器や生殖器なども含まれます。
仕事はできるものの後遺障害が原因で手際が悪いなど、ひとりで仕事を完了できない場合などが7級にあたります。ここで注意したいのは、何をもって「軽易な労務」と判断するかであり、具体的な基準は示されていません。
7級6号 一手のおや指を含み三の手指を失ったもの又はおや指以外の4の手指を失ったもの
片手の親指を含む3本、または親指以外の4本の手指を失った場合に認定されます。
「手指を失う」とは、手指を中手骨(指の付け根のすぐ下、手のひらの部分の骨)、または、基節骨(指の付け根から第2関節までの骨)で切断したもの。または、親指については指節間関節(親指の中央の関節)、それ以外の指については近位指節間関節(第2関節)において、基節骨と中節骨(第1関節と第2関節の間の骨)が離断したものを言います。
7級7号 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの
手指は切断していないものの、麻痺などで動かなくなった場合を指します。
7級8号 1足をリスフラン関節以上で失ったもの
リスフラン関節とは、足根中足関節ともよばれ、足の中ほど(足の甲のほぼ中央)にある関節を指します。このリスフラン関節と足関節(足首)の間で片足を失った場合を指します。
7級9号 一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
7級10号 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
どちらか片方の手のひじ関節以下関節以上、または片足のひざ関節以下足関節(足首)以上の関節が骨折し、うまく治癒せずグラグラと動くような状態で、常に硬性補装具などを必要とする状態を指します。
7級11号 両足の足指の全部の用を廃したもの
両親指の末節骨の長さの2分の1以上を失い、それ以外の足指は中節骨もしくは基節骨を切断したもの。または、遠位指節間関節、もしくは近位指節間関節で離断したもの。
また、中足指節関節または近位指節間関節(親指は指節間関節)の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されるものが7級に該当します。
7級12号 外貌に著しい醜状を残すもの
外貌(がいぼう)とは、頭部、顔面部、くびなど、日常露出する部分のこと。ここに以下のいずれかに該当し、人目につく程度以上の大きさの瘢痕や線状痕、組織陥没、色素沈着などがあることです。
・頭部 手のひら大(指の部分を含まず)以上の瘢痕又は頭蓋骨の手のひら大以上の欠損
・顔面 鶏卵大面以上の瘢痕、又は10円銅貨代以上の組織陥没
・頚部 手のひら大以上の瘢痕
7級13号 両側の睾丸を失つたもの
男性は、両側の睾丸を失い、精液中に精子が存在しないもの。女性は、両側の卵巣を失い、卵子を形成されないものを指します。
後遺障害7級で受け取れる後遺障害慰謝料と遺失利益
後遺障害で請求できる代表的なものに後遺障害慰謝料と逸失利益があります。
後遺障害慰謝料は後遺障害が残ってしまったことに対して請求できるもの。逸失利益は後遺障害により労働に支障が出る(=収入が減少してしまう)ことに対する補償です。
後遺障害7級の自賠責保険限度額は、1,051万円。
これは、後遺障害慰謝料と逸失利益の合計金額です。
後遺障害慰謝料の相場
後遺障害で請求できる後遺障害慰謝料の基準には、「自賠責保険基準」、「任意保険基準」、「弁護士基準」の3つがあります。任意保険については推定値となりますが、まずは比較してみましょう。
自賠責基準 | 任意保険基準 | 裁判所基準 (弁護士基準) |
---|---|---|
419万円 | 500万円 | 1,000万円 |
このように、自賠責基準と裁判所基準(弁護士基準)には大きな違いがあります。しかも裁判所基準は、これまで積み重ねられてきた過去の裁判例における賠償額の目安にすぎません。実際には事案ごとに慰謝料額が調整されますので、慰謝料の請求には経験豊富な弁護士への依頼が重要です。
逸失利益の相場
逸失利益は後遺障害により労働に支障が出る(=収入が減少してしまう)ことに対する補償です。
7級の労働能力喪失率56%
後遺障害3級以上の認定がなされると、それ以降の労働が完全に不可能となり収入を得ることができないと判定されます。労働能力の喪失度合いによって被害者本人はもちろん、扶養する家族が生活に困ることがないようにこの制度があります。
逸失利益は以下の計算で求められます。
逸失利益 =
前年度の年収 × 労働能力喪失率(56%)
× ライプニッツ係数