後遺障害4級に認定される症状と
後遺障害慰謝料、逸失利益相場
監修:弁護士 伊藤一星(弁護士法人宇都宮東法律事務所)
所属:栃木県弁護士会(登録番号:49525)
2020.8.27(最終更新日:2020.12.21)
後遺障害4級は、非常に大きな障害を残し、かろうじて労働はできるものの大きな制限があり、収入を得ることが困難と判断されるものです。
ここでは後遺障害4級に認定される症状を紹介し、それによって請求できる後遺障害慰謝料と逸失利益の相場を解説します。
後遺障害4級とは?
後遺障害4級は、1号から7号まであります。
詳しく見ていきましょう。
4級1号 両眼の視力が0.06以下になったもの
両目ともに視力が0.03~0.06になった場合、4級と認定されます。
視力とは眼鏡やコンタクト着用時の矯正視力です。
4級2号 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの
咀嚼(そしゃく)とは食べ物を咬み砕く機能のことです。咀嚼に障害がでる要因は、咬みあわせ、筋肉、歯牙、顎関節、開口等の異常などがあります。
4級では、「著しい障害を残す」となっていますので、流動食以外にやわらかいものであれば食べられる状態を差します。
また、「言語の機能に著しい障害」とは、4種の語音(口唇音、歯舌音、口蓋音、喉頭音)のうち、2種以上の発音ができないものを言います。
上記の障害が両方とも残った場合、4級となります。
4級3号 両耳の聴力を全く失ったもの
両耳の平均純音聴力レベルが90dB以上のもの。または、両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ最高明瞭度が30%以下のものを言います。
4級4号 一上肢をひじ関節以上で失ったもの
左右どちらかの片腕を肩関節において、肩甲骨と上腕骨(腕の付け根から上肢すべて)を離断したものを言います。利き手かどうかは問われません。
4級5号 一下肢をひざ関節以上で失ったもの
片足をひざ関節以上(股の付け根から膝上の間)で離断した場合を言います。
4級6号 両手の手指の全部の用を廃したもの
「用を廃する」とは、神経が切れるなどして麻痺し、機能しない障害を指します。基準は親指なら第一関節より根元、他の指なら第二関節より根元の可動域が2分の1以下になった場合がこれにあたります。
4級7号 両足をリスフラン関節以上で失ったもの
リスフラン関節とは、足根中足関節ともよばれ、足の中ほど(足の甲のほぼ中央)にある関節を指します。このリスフラン関節と足関節(足首)の間で両足を失った場合を言います。
後遺障害4級で受け取れる後遺障害慰謝料と遺失利益
後遺障害で請求できる代表的なものに後遺障害慰謝料と逸失利益があります。
後遺障害慰謝料は後遺障害が残ってしまったことに対して請求できるもの。逸失利益は後遺障害により労働に支障が出る(=収入が減少してしまう)ことに対する補償です。
後遺障害4級の自賠責保険限度額は、1,889万円。
これは、後遺障害慰謝料と逸失利益の合計金額です。
後遺障害慰謝料の相場
後遺障害で請求できる後遺障害慰謝料の基準には、「自賠責保険基準」、「任意保険基準」、「弁護士基準」の3つがあります。任意保険については推定値となりますが、まずは比較してみましょう。
常に介護を必要としない場合を例にします。
保険金 (共済金)基準 | 任意保険基準 | 裁判所基準 (弁護士基準) |
---|---|---|
737万円 | 900万円 | 1,670万円 |
このように、自賠責基準、任意保険基準、裁判所基準(弁護士基準)には大きな違いがあります。しかも裁判所基準は、これまで積み重ねられてきた過去の裁判例における賠償額の目安にすぎません。実際には事案ごとに慰謝料額が調整されますので、慰謝料の請求には経験豊富な弁護士への依頼が重要です。
逸失利益の相場
逸失利益は後遺障害により労働に支障が出る(=収入が減少してしまう)ことに対する補償です。
4級の労働能力喪失率92%
後遺障害3級以上の認定がなされると、それ以降の労働が完全に不可能となり収入を得ることができないと判定されます。労働能力の喪失度合いによって被害者本人はもちろん、扶養する家族が生活に困ることがないようにこの制度があります。
逸失利益は以下の計算で求められます。
逸失利益 =
前年度の年収 × 労働能力喪失率(92%)
× ライプニッツ係数