後遺障害11級に認定される症状と
後遺障害慰謝料、逸失利益相場
監修:弁護士 伊藤一星(弁護士法人宇都宮東法律事務所)
所属:栃木県弁護士会(登録番号:49525)
2020.8.27(最終更新日:2020.12.21)
後遺障害11級からは、一見しただけではわかりにくい障害も増えてきます。
ここでは後遺障害11級に認定される症状を紹介し、それによって請求できる後遺障害慰謝料と逸失利益の相場を解説します。
後遺障害11級とは?
後遺障害11級は、1号から10号まであります。
詳しく見ていきましょう。
11級1号 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
「著しい調節機能障害」とは、物を見るときの調節力が2分の1以下になったものを言います。
眼球の調整力はそもそも、年齢による違いがあります。そこで、5歳ごとに値を決め、それと比較して、調整力を判断します。また、55歳以上のときは障害の対象とならないとされています。
「著しい運動障害」とは、眼球の注視野の広さが2分の1以下になったものを言います。注視野とは頭を固定して眼球を動かし、直視できる範囲のこと。個人差がありますが、平均では単眼視で各方面約50度、両眼視で各方面約45度です。
上記のどちらかの障害が両目に残ったものが11級に該当します。
11級2号 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
両目のまぶたを開けているつもりでも、十分に開いておらず瞳孔が隠れたままになったり、逆にまぶたを閉じているつもりでも、瞳孔や角膜が露出してしまったりする状態を指します。
具体的には、動眼神経麻痺や眼瞼外傷、外転神経麻痺などが該当します。
11級3号 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
片目のまぶたを閉じたとき、角膜が完全に隠れないほどまぶたを欠損した状態を指します。
11級4号 十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
歯科補綴(しかほてつ)とは、歯科で治療したもの。10本以上の歯の治療が必要だったということです。永久歯のみが対象となります。
11級5号 両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
11級6号 一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
5号は、両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上のものを指します。
6号は、片耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの。または、平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のものを指します。
11級7号 脊柱に変形を残すもの
脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがX線写真等により確認できるもの。または、脊椎固定術が行われたもの。3個以上の脊椎について、椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたものが該当します。
11級8号 一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失つたもの
片手の人差し指、中指、薬指のうちのどれか1本を失った場合に認定されます。
11級9号 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの
片手の親指を含む2本以上に障害が残り、手指が動かなくなったり、感覚を失ったりしたものを言います。
11級10号 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
胸腹部臓器とは、呼吸器、循環器、小腸や大腸などの腹部臓器のほか、泌尿器や生殖器なども含まれます。10級の例では、ペースメーカーを植え込んでいて、平地を急いで歩く以上に激しい身体活動が制限されるものなどを指します。
後遺障害11級で受け取れる後遺障害慰謝料と遺失利益
後遺障害で請求できる代表的なものに後遺障害慰謝料と逸失利益があります。
後遺障害慰謝料は後遺障害が残ってしまったことに対して請求できるもの。逸失利益は後遺障害により労働に支障が出る(=収入が減少してしまう)ことに対する補償です。
後遺障害11級の自賠責保険限度額は、331万円。
これは、後遺障害慰謝料と逸失利益の合計金額です。
後遺障害慰謝料の相場
後遺障害で請求できる後遺障害慰謝料の基準には、「自賠責保険基準」、「任意保険基準」、「弁護士基準」の3つがあります。任意保険については推定値となりますが、まずは比較してみましょう。
自賠責基準 | 任意保険基準 | 裁判所基準 (弁護士基準) |
---|---|---|
136万円 | 150万円 | 420万円 |
このように、自賠責基準と裁判所基準(弁護士基準)には大きな違いがあります。しかも裁判所基準は、これまで積み重ねられてきた過去の裁判例における賠償額の目安にすぎません。実際には事案ごとに慰謝料額が調整されますので、慰謝料の請求には経験豊富な弁護士への依頼が重要です。
逸失利益の相場
逸失利益は後遺障害により労働に支障が出る(=収入が減少してしまう)ことに対する補償です。
11級の労働能力喪失率20%
後遺障害3級以上の認定がなされると、それ以降の労働が完全に不可能となり収入を得ることができないと判定されます。労働能力の喪失度合いによって被害者本人はもちろん、扶養する家族が生活に困ることがないようにこの制度があります。
逸失利益は以下の計算で求められます。
逸失利益 =
前年度の年収 × 労働能力喪失率(20%)
× ライプニッツ係数