後遺障害認定で該当なしになる理由と
慰謝料を得るための対策
監修:弁護士 伊藤一星(弁護士法人宇都宮東法律事務所)
所属:栃木県弁護士会(登録番号:49525)
2020.8.30(最終更新日:2020.12.21)
交通事故にあった後、後遺症の自覚症状があり、あきらかに痛みやしびれがあるのに、後遺障害の申請をした結果、「該当なし」との通知を知らされることがあります。こうなると後遺症慰謝料も逸失利益も請求できなくなり、到底納得できません。
このような場合、どうすれば後遺障害として認めてもらえるのかを解説します。
不服申立てをして再審査を受ける
後遺障害認定の結果、「該当なし」となった場合、結果を不服として異議申立てをし、再審査を受けることが可能です。
ただし、一度「該当なし」とされた結果を覆すわけですから、ただ不服だと言っても結果は変わらないでしょう。合理的な医学的証拠を集め、障害が正しく伝わる書類を作成する必要があります。つまり、かなりの覚悟が必要だと言うわけです。
再審査手続きの具体的な方法については、以下を参照してください。
なぜ、「該当なし」になったのかを理解する
後遺障害審査を受けたとき、「該当なし」となってしまう理由はどこにあるのでしょうか?
まずはこれを正しく理解しなければ、対策はたてられません。
主な理由は3つです。
【後遺障害認定で該当なしになる理由】
●自覚症状があるのに、裏付けとなる他覚的所見がない
●通院回数が少ない、または通院を途中でやめた
●障害を資料で十分に説明できていない
では、詳しく見ていきましょう。
自覚症状があるのに、裏付けとなる他覚的所見がない
「他覚的所見」とは、検査結果などから得られるデータをもとに医師が客観的に判断すること。具体的には、視診や打診、触診などによる理学的検査や、レントゲンやMRIなどによる画像検査、問診などによる神経学的検査が活用されます。
つまり、他覚的所見がないということは、痛みやしびれがあることを証明できないということであり、後遺障害とは認められません。
通院回数が少ない、通院を途中でやめた
通院回数が少ないと症状が軽く労働に支障がない、また通院を途中でやめたということは、痛みが回復したと評価されてしまいます。または、治るはずだった症状を自らの意思で治療を中断したから後遺症が残ったのであって、交通事故のためではないと判断されてしまいます。
仕事が忙しい人や主治医にだまって接骨院に通うようになった人に、このケースが多いようです。
症状はあっても、資料で十分に説明できていない
本人の自覚症状が診断書などに反映されていない場合、非該当となります。後遺障害の認定は書類でのみ行われるため、痛みを感じていることを診断書などで伝えなければ、認められるはずはありません。
再審査の準備をする
該当なしとなった理由が分かったら、その結果を覆すような書類を揃えます。特に、被害者本人が感じている痛みやしびれなどは、伝えなければ分かりません。まずは医師にしっかりと伝え、症状が存在するという裏付けとなる検査結果などとともに書類に記載してもらってください。
ときには、新たな検査をしたり、セカンドオピニオンを活用したりといった方法も選択肢になるかもしれません。