後遺障害の等級と認定のしくみ
監修:弁護士 伊藤一星(弁護士法人宇都宮東法律事務所)
所属:栃木県弁護士会(登録番号:49525)
2020.8.26(最終更新日:2020.12.21)
後遺障害は14の等級に分けて認定されます。ここでは、国土交通省で定められている後遺障害等級をふまえ、それぞれの等級別に説明をしていきます。
後遺障害は等級別に認定される
交通事故による後遺障害は、部位や程度によって1~14級の等級に分けられています。各等級は細かい条件が決められており、その数は140種類、35系列にも及びます。認定審査のときは、提出された書類と照らし合わせながら該当する等級を決定していきます。
では、どのように決められているのでしょうか?
具体的に見ていきましょう。
まず、障害が残ったのが手足なのか、内臓なのか、脳か、精神的な分野かといった部位で分類します。次に、手足が欠損したなど物理的なものか、動かなくなったり十分な役割を果たさなくなったりなど機能的な障害かで分類します。そして最後に、その障害の重さで等級を決めることになります。
障害の重さについては、例えば手足の切断などであれば場所で確定できますが、機能的な障害の場合、程度の判断は難しくなります。
たとえば、むちうちなどの場合、
●「局部に頑固な神経症状を残すもの」であれば12級
●「局部に神経症状を残すもの」であれば14級
●交通事故が原因で神経症状を残すと認められなければ後遺障害の対象外
となるわけです。
これらは提出する医療データと照らし合わせながら決定されます。妥当な判定を受けるために、どのような資料を提出するかがいかに重要なことか、お判りいただけると思います。
等級認定に関する3つの決まり
後遺障害等級認定には、3つの決まりがあります。それは障害が複数の個所で発生するケースや障害等級表で規定した以外の障害が起こることがあるからです。できる限りの障害に対し、柔軟に対応するための決まりだとも言えるでしょう。
3つとは、「併合・加重・相当(準用)」です。聞きなれない単語ですので、以下に簡単な説明をします。
併合
種類の違う障害が2つ以上残った場合、重い方の等級にあてはめるか、重い方の等級を1~3級繰り上げてあてはめようとするものです。
加重
すでに何らかの障害を持っていた人が、交通事故により障害の程度が重くなった場合にあてはめられます。賠償の対象は、事故後の等級と事故前の等級の差額。交通事故にあったタイミングで障害が重くなった場合でも、それが事故と関係がない理由だと判断されれば対象外となります。
相当(準用)
「相当」または、「準用」とも言われます。障害等級表にすべての障害が記載されているわけではありません。記載がない障害の場合、その障害の内容から類するものを見つけ、等級を決めることになっています。
たとえば、鼻の障害について、等級表では欠損障害しか定められていません。ですが、欠損を伴わず、嗅覚脱失や鼻呼吸困難などの症状が残った場合も、その程度によって認定される可能性があるというわけです。
認定基準にはあいまいさが残る
障害は数値化できるものばかりではないため、等級認定の基準は抽象的な表現となります。
それを基準に判定をするため、あいまいさが残り、判定すれ人によって変化することがあります。このあいまいさによって不利益とならないためには、医学的情報を揃えることが重要となります。
以下に、後遺障害等級表を掲載します。各等級により、どの程度だと判断されているのかをご確認ください。
介護を要する後遺障害の場合の等級及び限度額 | ||
---|---|---|
等級 | 介護を要する後遺障害 | 保険金(共済金)額 |
第一級 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
4,000万円 |
第二級 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
3,000万円 |
後遺障害の等級及び限度額 | ||
---|---|---|
等級 | 後遺障害 | 保険金(共済金)額 |
第一級 | 両眼が失明したもの咀嚼及び言語の機能を廃したもの 両上肢をひじ関節以上で失つたもの 両上肢の用を全廃したもの 両下肢をひざ関節以上で失つたもの 両下肢の用を全廃したもの |
3,000万円 |
第二級 | 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下になつたもの 両眼の視力が〇・〇二以下になつたもの 両上肢を手関節以上で失つたもの両下肢を足関節以上で失つたもの |
2,590万円 |
第三級 | 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇六以下になつたもの 咀嚼又は言語の機能を廃したもの 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 両手の手指の全部を失つたもの |
2,219万円 |
第四級 | 両眼の視力が〇・〇六以下になつたもの 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの 両耳の聴力を全く失つたもの 一上肢をひじ関節以上で失つたもの 一下肢をひざ関節以上で失つたもの 両手の手指の全部の用を廃したもの 両足をリスフラン関節以上で失つたもの |
1,889万円 |
第五級 | 一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になつたもの 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 一上肢を手関節以上で失つたもの 一下肢を足関節以上で失つたもの 一上肢の用を全廃したもの 一下肢の用を全廃したもの 両足の足指の全部を失つたもの |
1,574万円 |
第六級 | 両眼の視力が〇・一以下になつたもの 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失つたもの |
1,296万円 |
第七級 |
一眼が失明し、他眼の視力が〇・六以下になつたもの 両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 一手のおや指を含み三の手指を失つたもの又はおや指以外の四の手指を失つたもの 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの 一足をリスフラン関節以上で失つたもの 一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 両足の足指の全部の用を廃したもの 外貌に著しい醜状を残すもの 両側の睾丸を失つたもの |
1,051万円 |
第八級 |
一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下になつたもの 脊柱に運動障害を残すもの 一手のおや指を含み二の手指を失つたもの又はおや指以外の三の手指を失つたもの 一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの 一上肢に偽関節を残すもの 一下肢に偽関節を残すもの 一足の足指の全部を失つたもの |
819万円 |
第九級 |
両眼の視力が〇・六以下になつたもの 一眼の視力が〇・〇六以下になつたもの 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの 一耳の聴力を全く失つたもの 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失つたもの 一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの 一足の足指の全部の用を廃したもの 外貌に相当程度の醜状を残すもの 生殖器に著しい障害を残すもの |
616万円 |
第十級 |
一眼の視力が〇・一以下になつたもの 正面を見た場合に複視の症状を残すもの 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの 十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの 一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの 一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
461万円 |
第十一級 |
両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの 一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの 脊柱に変形を残すもの 一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失つたもの 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの |
331万円 |
第十二級 |
一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 一耳の耳殻の大部分を欠損したもの 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの 長管骨に変形を残すもの 一手のこ指を失つたもの 一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの 一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの 局部に頑固な神経症状を残すもの 外貌に醜状を残すもの |
224万円 |
第十三級 |
一眼の視力が〇・六以下になつたもの 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの 一眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの 五歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 一手のこ指の用を廃したもの 一手のおや指の指骨の一部を失つたもの 一下肢を一センチメートル以上短縮したもの 一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失つたもの 一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの |
139万円 |
第十四級 |
一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの 三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失つたもの 一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなつたもの 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの 局部に神経症状を残すもの |
75万円 |