後遺障害申請の方法(被害者請求の場合)
監修:弁護士 伊藤一星(弁護士法人宇都宮東法律事務所)
所属:栃木県弁護士会(登録番号:49525)
2020.8.28(最終更新日:2020.12.21)
後遺障害の等級認定を受けるとき、被害者請求を利用するなら、自分で書類や医療情報、画像などを揃える必要があります。
ここでは、適切な認定を受けるために必要な書類やその書き方について説明します。
後遺障害の等級認定を受けるために必要な書類とは?
後遺障害等級の認定には面談などはなく、書類でのみで審査されます。そのため、不利益のない認定を受けるには、必要な書類をいかに揃えるかがポイントとなります。
後遺障害等級認定に必要な書類(代表的なもの)
1. 自賠責保険支払請求書兼支払指図書
2. 交通事故証明書、事故発生状況報告書
3. 診療報酬明細書及び診断書
4. 後遺障害診断書
5. レントゲン、MRI等の画像
後遺障害には、見た目や画像などで証明しやすいものと、そうでないものがあります。特に痛みなどは数値で表すことができず、書類で証明するのは難しくなります。それでも、後遺障害等級認定は書面のみで行われますので、何とかして伝えなければなりません。
もし、書面に記載されていない後遺障害があった場合、等級認定の審査の対象外となり、自分にとって不利益となります。書類への記載もれはもちろん、障害を証明するための検査にもれなどがないようにしましょう。
また、診断書などに障害をしっかりと書いてもらうためには、医師に伝えるだけでなく、交通事故に詳しい弁護士にチェックを受け、不備があった場合はどのようなものを揃えるべきかと言ったアドバイスをもらうことが重要です。
書類の集め方やポイント
自賠責保険支払請求書兼支払指図書
「自賠責保険支払請求書兼支払指図書」は保険会社から送られてきます。記入例も同封されていますので、それを参照するとよいでしょう。また、間違いがないよう「交通事故証明書」を見ながら記載してください。
重要なポイントは以下になります。
「請求者」は、被害者自身が請求する場合は、自分の住所・氏名を記載します。被害者が子どもなどの場合は、親の名前を書くことになります。
「印」は、印鑑登録をしてある実印を使ってください。まだ印鑑登録をしていない場合は、まず登録をしてから手続きを行うことになります。
「自賠責保険証明書番号」は交通事故証明書に記載されています。取得方法については下記を参照してください。
「保険契約者」の欄は自賠責保険を契約している人の名前を書く欄で、加害者側のことです。分からなければ空欄のままでかまいません。
交通事故証明書
「交通事故証明書」の取得は、まず、警察署や交番で交通事故証明書の交付申請用紙をもらいます。それに必要事項を記載し、郵便局で手数料を添えて申し込みます。交付手数料は1通につき600円。ほかに、払込料金がかかります。申請書1通で、複数枚申し込みが可能です(料金は部数分必要)。指定した住所に1週間以内に送付されてきます。
また、自動車安全運転センターに持ち込めば、その場で発行してくれます。手数料は郵送と同じ600円です。
症状固定まで任意一括対応で保険会社が治療費を負担していた場合、保険会社にもらうことも可能です。
事故発生状況報告書
「事故発生状況報告書」は交通事故の発生状況を説明するための書類で、上記の交通事故証明書とは違うものです。保険会社から書類のテンプレートがもらえますので参照して作成します。
記載するのは事故が起きた年月日、時刻、天候、交通状況などの情報と、事故発生状況略図。被害者と加害者の車の位置や進行方向、信号があればその色などを図解します。
何をどう書けばいいのか迷う方が多い書類です。弁護士などにアドバイスを受けながら記載するとよいでしょう。
診療報酬明細書及び診断書
任意一括対応で保険会社が治療費を負担していた場合、診断書と診療報酬明細書(レセプト)は任意保険会社が保管しています。この場合はコピーをもらうようにします。
健康保険を使って治療をしていた場合は、病院に依頼して作成してもらいます。診療報酬明細書は発行してもらえないこともありますが、この場合はなくてもかまいません。これまでに支払った領収証の原本を添付します。
柔道整復師の接骨院や鍼灸院などの施術を受けていた場合、「施術証明書」を入手します。
後遺障害診断書
後遺障害診断書は等級認定においてもっとも重要な書類です。被害者本人ではなく、医者に作成してもらいます。
作成にあたっては、どこがどのように痛むのか、具体的にどのような症状があるのかを医師に伝え、もれなく記載してもらってください。また、後遺障害診断書を受け取ったら必ず内容を確認し、足りない部分は追記してもらえるよう依頼します。
レントゲン、MRI等の画像
レントゲンやMRI、CTスキャンなどの画像は、すべて提出するのが理想です。医師に依頼し、手に入れてください。それが難しい場合、最低でも、受傷直後のものと症状固定を行ったときのものを用意するべきでしょう。
時効が来ると請求できなくなる
自賠責保険の請求には時効があります。時効は3年です。つまり、3年を過ぎると自賠責保険を請求できる権利が消滅するということです。
時効の起算日は、被害者請求の後遺障害の損害賠償については、症状固定日の翌日からとなります。
万が一、時効が近くなったら、自賠責保険会社に時効の中断を申請することができます。自賠責保険会社がこれを認めれば、時効は中断されます。